長い歴史の変遷のなかで、変わることなく引き継がれてきた、
西市辺の宮座行事と薬師堂裸まつり
私達は、そのなかに遠い祖先の暮らしと、現代にまでつづく深い信仰の証を見つめるものであります。 それらは天下太平、五穀豊穣、町内安全、息災延命を願うものであります。なかでも、正月八日に薬師堂で奉修される護摩供養と裸まつりは多くの参拝者で賑わい有名であります。
裸まつり、夜8時過ぎからはじまり、町内若連中(独身の長男)が、その年の若家から精進潔斎をなし、つぎつぎと薬師堂に入堂して「御十二灯」と叫んで賽銭を御本尊に向かって勢いよく供え、一同が座につくと、酒式がはじまり謡を吟じながら、古式も床しく儀式がすすんでいく。 やがて酒式が最終の謡いでおわると同時に、大太鼓が烈しく鳴りひびき、それを合図に若衆は一斉に裸になり「チョチセイ(頂礼)、チョチセイ(頂礼)」と繰り返し唱えながら、天井高くつるした繭玉の争奪がはじまる。 競い合い揉み合う若衆の熱気と参拝者の興奮で、堂内はさしもの厳寒をも忘れさせる雰囲気となる。やがて天井高くつるした繭玉を手にした若者が、その年の勇者で、良縁と長命が得られると言い伝えられている。 そのあと御本尊薬師如来さまに、除病、諸願成就の祈願が裸の若衆によって、徹夜でつづけられるのです。
短い言いつたえながら、つぎのような話が残されています。 昔、ある雪の多い年に、あまりの大雪で参詣ができなくなり、裸まつりを取り止めたことがあった。深夜、一人の若者が大雪のなか、かろうじて、薬師堂に参詣すると、お薬師さんが十二神将らとともに踊っておられたというのだ。 以来、毎年この祈願踊りはつづけられているという。それは子孫がこの祭りを伝承し、薬師如来への信仰をより深めてくれるようにとの先祖の切ない願であったのでしょう。
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